量子状態にある時計の時間遅れ

一般相対性理論によれば、重力の強い場所ほど時計はゆっくり進みます。これは GPS の補正にも使われる確立した効果です。では時計が「高い場所」と「低い場所」の量子的重ね合わせに置かれたら、時計の進み方はどう記述されるのでしょうか。

二つの固有時が重なる

量子時計を空間的な重ね合わせにし、二つの経路で異なる重力ポテンシャルを経験させると、内部状態に異なる位相が蓄積します。経路と時計の内部自由度がもつれるため、干渉の見え方に重力による固有時の差が表れます。

Paczos らは、量子状態にある時計と重力場の相互作用を含めて、この効果をどう定式化するかを分析しました。論文 これは「一つの時計が二つの時刻を主観的に感じる」という物語ではありません。重ね合わせた経路に対応する量子位相を、干渉実験の確率として予測する話です。

実験への距離

時計の内部遷移を高精度に保ちながら、重力によるごく小さな差を十分長く蓄積するのは難しい課題です。ただし、原子時計、原子干渉計、光格子時計の技術は急速に向上しています。理論上の問いは、測定可能な差へ少しずつ翻訳されつつあります。

重力が量子状態なら、座標や「静止」の意味も一意ではありません。→ 量子基準系――誰の時計・誰の位置か