ブラックホールの「アイランド」と情報問題
ブラックホールが蒸発すると、最初に落ちた物の量子情報は失われるのでしょうか。量子論の時間発展が保たれるなら情報は失われないはずですが、ホーキング放射を素朴に追うと、その結論と緊張します。これがブラックホール情報問題です。
アイランドとは何か
アイランドは、放射のエントロピーを計算するとき、ブラックホール内部のある領域を放射側の量子系の一部として数える必要がある、という処方です。境界は「量子極値曲面」と呼ばれる条件で決まります。ここでいう島は宇宙空間に浮かぶ物体ではなく、エントロピー計算に現れる領域です。
Penington と Almheiri らの2019年の仕事は、蒸発模型でこの処方を使うと、情報が保たれる場合に期待される Page 曲線を得られることを示しました。Penington の論文 Almheiri らの論文
どこまで分かったのか
これは情報問題への大きな前進ですが、現実の天体ブラックホール内部を直接記述した完成解ではありません。多くの成果は、制御しやすい半古典的模型やホログラフィーに基づきます。蒸発の微視的な過程や、観測者が情報を取り出す実際の手順には、なお未解決の部分があります。
アイランドが示すのは、量子系の「どこに情報があるか」が、古典的な空間分割より複雑になりうるということです。→ アイランドの情報はどのように符号化されるのか