茨の王子 — The Prince of Thorns
プレイリスト:ラプンツェル歌劇
幕:第三幕
歌詞
[STRANGE MYSTERIOUS DARK FAIRYTALE]
[INTRO — GLASS HARMONICA / DISTANT FEMALE HUMMING]
月が 塔を照らしていた
あまりにも白く
まるで今夜 何が起こるのかを
月だけが 知っているように
[VERSE 1 — FRAGILE FEMALE VOICE]
あなたが来る夜は 分かるの
森の鳥たちが 黙るから
あなたが塔の下に 立つだけで
冷たい石が 温かくなる
ねえ これは恋でしょう?
本で読んだこともない
誰にも 教わったこともない
それなのに
あなたの声を聞くだけで
胸の奥に 春が来る
[MALE VOICE — DISTANT] ラプンツェル……
[FEMALE VOICE] 今夜も来てくれた……
[MALE VOICE]
髪を……
垂らしておくれ
[VERSE 2 — ETHEREAL]
金色の髪が 月を横切り
塔の壁を 静かに降りる
彼はそれを握った
その瞬間
また――
あの声がした
[UNKNOWN WHISPER] ……登っておいで……
[MALE VOICE — UNEASY]
今のは……
君か?
[FEMALE VOICE] 何が?
[MALE VOICE]
いや……
何でもない
[INSTRUMENTAL — HEARTBEAT / LOW CELLO]
一段
また一段
王子は 金色の夜を登る
地上が遠ざかる
森が遠ざかる
そしてついに
窓から 白い手が伸びた
[FEMALE VOICE — BREATHLESS] ……あなた
[MALE VOICE] ラプンツェル……
[LONG SILENCE]
[DUET — VERY INTIMATE]
初めて あなたに触れた
初めて あなたの目を見た
こんなに近くに いるのに
なぜだろう
あなたはまるで
遠い昔に 失くした人のよう
[FEMALE] 私はあなたを 待っていた
[MALE] 僕たちは今日 初めて会った
[FEMALE]
いいえ……
ずっと前から
[MALE] ……ずっと前?
[FEMALE — SMILING] そんな気がするの
[CHORUS — BEAUTIFUL, ALMOST TOO BEAUTIFUL]
連れていって
この塔の外へ
あなたとなら 怖くない
森を越えて
夜を越えて
名前のない国まで
私は何も いらない
金色の髪も
この美しい塔も
永遠の命さえ
いらない
あなたがいるなら
私は
人間でいたい
[MUSIC SUDDENLY DARKENS]
[MALE VOICE — WHISPER] ……人間?
[PAUSE]
[FEMALE] どうしたの?
[MALE]
いや……
何でもない
[VERSE 3 — ESCAPE PLAN]
王子は毎夜 絹を運んだ
一本 また一本
少女はそれを 密かに結び
塔から降りる 梯子を編んだ
あと少し
あと一夜
あと一夜で
自由になれる
ラプンツェルは 笑っていた
生まれて初めて
明日のことを 夢見ながら
[WITCH VOICE — ALMOST INAUDIBLE] ……明日?
[ALL MUSIC STOPS]
[VERSE 4 — THE WITCH]
翌日の夜
王子は 塔へ戻った
いつものように 呼びかけた
[MALE VOICE]
ラプンツェル
ラプンツェル
金色の髪を 垂らしておくれ
[SILENCE]
そして
髪が降りてきた
金色の
長い
長い髪
王子は 何も疑わず
登った
一段
また一段
窓へ手をかけた
そこにいたのは――
[WITCH — CLOSE WHISPER]
こんばんは
王子様
[DISSONANT ORCHESTRAL HIT]
[MALE] ……ラプンツェルは?
[WITCH]
あの子なら
もういないよ
[MALE] どこへやった!
[WITCH]
お前が
あの子に
「外」を教えたからね
[MALE] 返せ!
[WITCH — QUIET LAUGHTER]
返す?
何を?
あの子は最初から
お前のものではない
[VERSE 5 — WITCH LAMENT]
私はあの子を 隠した
世界から
王から
男から
そして――
あの子自身から
お前には 分からない
あの子が泣くと
何が起こるのか
[MALE] 何を言っている……
[WITCH]
知らない方がいい
ただ一つだけ 教えてやろう
王子様
お前が恋した少女は
お前が思っているほど
弱くはない
[MALE — DESPERATE]
ラプンツェル!
ラプンツェル!!
[CHOIR — DISTANT]
ラプンツェル……
ラプンツェル……
[VERSE 6 — THE FALL]
王子は窓辺へ 駆け寄った
森へ叫んだ
返事はない
月だけが こちらを見ていた
彼女のいない世界が
突然
意味を失った
[MALE VOICE — BROKEN]
君がいないなら……
この世界を 見る意味など……
[WITCH] やめなさい
[MALE] ラプンツェル……
[WITCH — FOR THE FIRST TIME, FRIGHTENED] 待て!
[MALE] ……僕も行く
[LONG SILENCE]
王子は
塔から
身を投げた
[ORCHESTRA FALLS INTO SILENCE]
風
夜
枝
そして――
茨
[SHARP STRING GLISSANDO]
無数の棘が
彼の目を裂いた
[MALE SCREAM — DISTANT]
[BLACK SILENCE]
[VERSE 7 — BLIND PRINCE]
朝が来た
王子は 生きていた
けれど
世界は消えていた
空も
森も
月も
彼女の金色の髪も
何ひとつ 見えなかった
両手を伸ばしても
あるのは 冷たい風だけ
[MALE VOICE — ALMOST SPOKEN]
ラプンツェル……
どこにいる……
[CHORUS — TRAGIC MALE LEAD]
私は王子だった
城があった
名前があった
目があった
未来があった
今は何もない
ただ
君の声だけが
この暗闇の中に 残っている
ラプンツェル
もし君が この世界のどこかにいるなら
歌っておくれ
もう一度だけ
僕にはもう
君を探すための
目がないから
[VERSE 8 — THE WASTELAND]
季節が巡った
盲目の王子は
荒野を歩いた
夏を越え
冬を越え
石につまずき
川に倒れ
名も知らぬ村で パンをもらい
また歩いた
王冠を捨て
剣を捨て
最後には
自分の名前さえ
口にしなくなった
それでも夜になると
彼は耳を澄ました
風の向こうに
あの歌がないかと
[MALE WHISPER] ラプンツェル……
[VERY DISTANT FEMALE VOICE] ……あなた……
[MALE] ……?
[FEMALE VOICE — ALMOST IMPOSSIBLE TO HEAR] ……ここよ……
[MALE] ラプンツェル?
[WIND]
[FINAL CHORUS — FEMALE VOICE ENTERS FROM VERY FAR AWAY]
[MALE]
君なのか
それとも
また森が見せる 夢なのか
[FEMALE] 私はここにいる
[MALE] どこだ……
[FEMALE]
あなたが
私を見つけるのではない
今度は
私が
あなたを見つける
[CHOIR — VERY SOFT]
ラプンツェル……
ラプンツェル……
[OUTRO]
荒野の彼方で
ひとりの女が
歌っていた
その頬を
一粒の涙が
静かに流れた
そして――
まだ誰も知らなかった
その涙が
失われた光を
もう一度
呼び戻すことを
[ONE DISTANT BELL]
[UNKNOWN WHISPER — ALMOST SILENT] ……まだ終わっていない……
[END]